奈良の鰻をめぐっては、ネット上でいくつかの誤った認識が流布しています。現場の取材データに基づき、それらの真相を正しく補正します。
第一の誤解は、「関西だから奈良の鰻はすべて地焼き(直火焼き)である」という思い込みです。歴史的に京都や大阪の公家・商人文化だけでなく、社寺参詣を通じて江戸や尾張からの文化も流入した奈良では、東京の名店で修行を積んだ職人や、創業時より江戸前の技法を愚直に守り続ける名店が堂々と根付いています。これを誤認して来店すると、「思っていた食感と違う」というミスマッチを生むことになります。
第二の誤解は、「鰻の品質は価格の高さに比例する」という短絡的な見方です。前掲の比較表でも示した通り、天理方面などの郊外に位置する穴場店は、店舗の装飾コストを削り、問屋ルートの大量一括仕入れを行うことで、都心部の半額近い価格で最高級の国産鰻を提供しています。「高価=美味、安価=低品質」という図式は、奈良の鰻市場においては必ずしも当てはまりません。