全中陸上の標準記録突破は、中学生にとって栄誉ある目標であると同時に、育成年代のスポーツ医学・教育社会学の観点からは重大なリスクをはらんでいます。近年懸念されているのが、中学生段階での「過度な早期専門化(Early Specialization)」と「バーンアウト(燃え尽き症候群)」です。
全中出場を急ぐあまり、骨端線が閉じていない成長期の身体に過度な高強度トレーニングを課し、疲労骨折やオスグッド病などの重篤な障害を抱えてしまうケースが後を絶ちません。さらに、保護者や指導者が自己実現の手段として子どもに過度な期待を投影する「過干渉」や、健全な自立を阻む「心理的バウンダリー(境界線)の崩壊」も現場で深刻化しています。
中学生年代の陸上競技において最も大切なのは、「全中出場」という短期的な結果だけに価値を置かず、高校・大学・シニアへと続く「長期的なアスリート育成(LTAD)」の視点を持つことです。標準記録の突破を目指して全力を尽くすプロセスそのものを称賛し、仮に0秒01届かなかったとしても、選手の自己肯定感を傷つけない心理的サポート体制を大人が整えることが求められます。