イカの活き造りが運ばれてきた瞬間、誰もがその透明度に息を呑みます。身の下に敷かれた大葉やスダチの緑がくっきりと透けて見え、まだかすかに動くゲソや、皮膚の斑点が細かく明滅する様子は、活魚ならではの生命力そのものです。
「東京や大阪で食べるイカは白くてねっとりしているが、福岡の活き造りはコリコリとした力強い歯ごたえと、噛むほどに広がる澄んだ甘みに衝撃を受けた」——現場の取材で県外からの旅行者が口を揃えて語る実感です。
そして、活き造りの本当のクライマックスは、刺身を食べ終えた後に訪れます。スタッフに皿を下げてもらい、残ったゲソやミミ(エンペラ)を調理してもらう「後造り(天ぷら・塩焼き)」です。
熟練の料理人が手早く薄衣で揚げる天ぷらは、刺身とは打って変わって身が驚くほどふんわりと柔らかく仕上がります。噛んだ瞬間に立ち上るイカ本来の甘い香りと、サクサクの衣、そして天つゆや抹茶塩とのハーモニーは、「後造りの天ぷらこそがメインディッシュ」と語る福岡市民が少なくない理由を雄弁に物語っています。