映画史最大の幻『生きたメキシコ』なぜ未完に?巨匠の狂気と波乱の全貌

映画史最大の幻『生きたメキシコ』なぜ未完に?巨匠の狂気と波乱の全貌

映画史最大の幻『生きたメキシコ』なぜ未完に?巨匠の狂気と波乱の全貌とはどんな影響があるのか? 背景や要点を丁寧に紐解いて紹介します。

エイゼンシュテインの手を離れたフィルムは、その後悲惨な運命を辿りました。1933年にはプロデューサーのソル・レッサーによって劇映画風に強引に編集された『メキシコの嵐(Thunder Over Mexico)』が公開され、映画関係者や文化人から「巨匠の意図を冒涜する切り刻みだ」と大猛反発を受けました。その後もマリ・シートンによる『太陽の時(Time in the Sun)』など、様々な編集版が無秩序に世に出回ることになります。

事態が大きく動いたのは、エイゼンシュテインの死から約30年が経過した1970年代後半でした。当時の共同制作者であったグリゴリー・アレクサンドロフ監督が、ソ連映画技術者たちとともにアメリカに保管されていたネガを収集。エイゼンシュテインが遺した詳細な絵コンテとメモを厳格に参照しながら、最も監督の意図に忠実な形で再構成した復元版『メキシコ万歳(¡Que viva México!)』(1979年版)を完成させたのです。

この復元版によって、『生きたメキシコ』は映画史における正当な評価を取り戻しました。エイゼンシュテイン独自のダイナミックなモンタージュと民族誌的リアリズムの融合は、エミリオ・フェルナンデス監督や名撮影監督ガブリエル・フィゲロアなど、後の「メキシコ映画黄金期」の礎を築く決定的な影響を与えたと評されています。

鈴木 陽菜
著者

鈴木 陽菜

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