音楽家やスコア愛好家を唸らせてやまないのが、Harry's Wondrous World フルスコア 分析から見えてくる驚異的な書法です。ウィリアムズは本楽曲を、映画本編の断片的なBGMとしてではなく、演奏会用組曲(Concert Suite)として独立して成立する完璧な交響詩として書き下ろしました。
楽曲の骨格を成すのは、以下の緻密な音楽的仕掛けです。
第一に、木管楽器の超絶技巧的なパッセージです。フルート、オーボエ、クラリネットが紡ぐ細やかな16分音符のアルペジオとスケールは、宙を舞う金色のスニッチや、魔法の粉がキラキラと降り注ぐ情景を完璧に視覚化します。旋律の背景で休みなく運動し続ける木管群の色彩感が、楽曲全体に躍動感を与えています。
第二に、複数のライトモティーフの精巧なフーガ・対位法的融合です。楽曲中には「ハリーのテーマ(メイン旋律)」だけでなく、空を飛ぶ高揚感を描いた「フライング・テーマ」、さらにハグリッドの素朴な温かさを想起させる木管の牧歌的なモチーフが、まるで万華鏡のように次々と顔を出します。変拍子や転調を巧みに操りながら、決してつぎはぎにならず一つの流麗な物語として構築する手腕は、後期ロマン派(チャイコフスキーやリヒャルト・シュトラウス)の直系たるウィリアムズの真骨頂です。
第三に、金管楽器と打楽器による圧倒的なクライマックス設計です。ホルンとトロンボーンが歌い上げる主旋律の重厚なコラールに対し、トランペットが鋭いファンファーレを重ね、シンバルとティンパニが最高潮の瞬間に炸裂します。空間全体を揺るがすような倍音の広がりが、聴衆を純粋な歓喜の渦へと巻き込みます。