『水滸伝』の成否を決定づけるのは、108星の長である「及時雨(きゅうじう)」こと宋江のキャラクター設計です。小説原作における宋江は、謙虚で情に厚い反面、優柔不断で朝廷への忠誠に固執し、読者から「苛立ちを覚えるリーダー」として批判されることもしばしばありました。
この難役を劇的に昇華させたのが、2011年版で宋江を演じた名優チャン・ハンユー(張涵予)です。『集結号(戦場のレクイエム)』などで知られる彼の低く響く野太い声と鋼のような眼光は、従来の泣き虫な小役人像を完全に解体しました。制作発表会や特番インタビューにおいてチャン・ハンユー自身が語ったように、「宋江は単なる偽善者ではなく、荒れ狂うアウトローたちを束ね上げ、彼らに名誉ある社会復帰を果たさせようともがき続けた孤高の政治家」という解釈が全編を貫いています。
脇を固める好漢たちのキャスティングも完璧な布陣を誇ります。
- 豹子頭・林冲(演:フー・ドン/胡東):元八十万禁軍教頭としての哀愁を背負い、理不尽に妻子を奪われながらも武人の誇りを貫く佇まいが視聴者の涙を誘います。
- 行者・武松(演:チェン・ロン/陳龍):素手で虎を退治する豪快さと、兄の仇を討つ凄惨な修羅の道を迫真の肉体美と殺陣で体現しました。
- 花和尚・魯智深(演:チン・ハンルイ/晋松):巨躯から繰り出される豪放磊落なパワーと、柳の巨木を引き抜く怪力、そして誰よりも純粋な慈悲の心を完璧に表現しています。
- 黒旋風・李逵(演:カン・カイ/康凱):宋江を狂信的に崇拝し、無邪気さと残虐性が同居する梁山泊の切り裂き役を愛嬌たっぷりに演じ切りました。
男たちの泥臭い友情と絆が交錯するなか、彼らが宴席で酒を酌み交わし、戦場で背中を預け合う一瞬一瞬が、現代の視聴者にも強烈なエモーションをもたらします。