給与明細をすぐに処分してしまうことには、思わぬリスクが潜んでいる。最も深刻なのが、給料の計算間違いや未払い残業代が発生していた場合の立証困難だ。会社との間で労働時間を巡る意見対立が生じた際、過去の支給実態を客観的に証明する一次資料として、明細書は極めて高い証拠能力を発揮する。
トラブルが発生した際、労働者が駆け込む窓口となるのが労働基準監督署である。同監督署に申告を行う際にも、具体的な支給額や控除額が印字された給与明細の存在が調査のスムーズさを左右する。また、労働問題の専門家である社会保険労務士への相談時においても、過去の明細が手元にあるかないかでアドバイスの具体性や解決スピードに雲泥の差が出るのが現実だ。
さらに、退職後の雇用保険(失業手当)の給付額算定や、将来受け取る厚生年金の記録に誤りがあった場合にも、給与明細は動かぬ証拠となる。標準報酬月額が正しく改定されていなかったり、社会保険料が過剰に引き落とされていたりする事例は決してゼロではない。手元に明細が残っていなければ、数年前の自らの権利を主張することは事実上不可能に近い。