映画のオープニングを飾る名物ロゴや、ハリウッドのパニック映画で聴くライオンの「ウォォォォン!」という雷鳴のような轟音。実は、音響制作の世界において本物のライオンの鳴き声音声がそのまま使われるケースは稀です。
音響効果のプロフェッショナルたちによると、本物のライオンの咆哮は周波数が低すぎて重低音に偏っており、映画館のスピーカーや一般的な音響システムを通すと「ボフッ、ボフッ」というこもった音に聴こえがちで、映像としてのケレン味に欠けるという課題があります。そのため、劇中で観客を震え上がらせる効果音には、トラの鋭い咆哮やハイイログマの唸り声、さらにはラクダの叫び声などを複数層にレイヤー(重ね合わせ)加工した合成音声が広く採用されてきました。
名作アニメの実写版映画などでも、より感情豊かでドラマチックな演出を施すため、特殊なフォーリーサウンド(擬音)が緻密に構築されています。メディアが作り上げた「わかりやすい猛獣の声」と、大自然の中で極限の効率を追求した「本物の咆哮」。そのギャップを知ることも、野生動物の真の生態を理解する醍醐味のひとつです。