原作PCゲーム版の完結時、竜騎士07氏はあえて「読者自身の手で考えてほしい」というスタンスを貫き、真相を猫箱の中に閉じ込める抽象的な表現(魔法エンド・手品エンドの選択)に留めました。このアプローチは当時「推理を投げ出した」「答えを描かないアンフェアな結末」と批判を浴びる要因にもなりました。
その沈黙を破り、すべての答え合わせを白日の下に晒したのが、夏海ケイ氏が作画を担当したコミカライズ版『うみねこのなく頃に散 Episode 8 - Twilight of the golden witch』です。原作の意図を汲み取りつつも、商業ミステリーとしての完全解明に踏み込んだ漫画版では、偽書(ボトルメッセージ)ではない「1986年10月に六軒島で実際に起きた現実」が克明に描かれました。
漫画版で明かされた驚愕の現実は、「魔女の計画通りの連続殺人は、途中で完全に頓挫していた」という事実です。碑文の謎を解いたのは親族の大人たちでした。黄金を前にした親族会議は一時和解に向かうかに見えましたが、遺産分配と借金苦から疑心暗鬼が爆発。戦人の父である右代宮留弗夫と後妻の霧江が、金塊を独占し自らの不正を隠蔽するために暴走を始めます。
留弗夫と霧江の手によって、蔵臼夫妻や秀吉、子供たちが次々と銃殺され、最終的に絵羽が応戦して留弗夫と霧江を射殺。ヤスが計画した「魔女の儀式」とは全く無関係に、生々しい人間の金銭欲とエゴによる血みどろの銃撃戦が惨劇の本質だったのです。その後、島に仕掛けられた時計仕掛けの爆弾が爆発し、すべての証拠と肉体を吹き飛ばしました。
生き残ったのは、地下貴賓室の防空壕に隠れていた右代宮絵羽と、ヤスと共にモーターボートで海へ脱出した右代宮戦人の2人のみ。ヤスは自ら海へ身を投げて命を絶ち、彼女を助けようとして頭部を強打した戦人は記憶を失い、のちに車椅子の作家「八十八(八城十八)」として生きることになります。漫画版はこの凄惨な地獄絵図と、数十年後にようやく果たされた戦人と縁寿の魂の和解を描き切り、原作ファンの長年の胸のつかえを完全に解消させました。