穴に物を落とすと下から出てくるという一連の現象は、大人の目には当たり前の物理法則に過ぎません。しかし、生後6か月から2歳前後の子どもにとって、これは脳科学的・認知心理学的に極めて刺激的な「大発見」の連続です。近年の育児トレンドとして定着したモンテッソーリ教育においても、この動作は「物を握って特定の場所に正確に離す」という随意運動の完成期に最適な教具として位置づけられています。
赤ちゃんが夢中になる最大の要因は、発達心理学でいう「対象の永続性」の確認作業にあります。生後8カ月頃までの乳児は、目の前から物が消えると「この世から存在が消え去った」と認識します。それが「上部の穴から入って見えなくなっても、下の排出口から再び姿を現す」という予測と結果の一致を体験することで、脳内のシナプスが急速に結合し、強い快感(ドーパミンの分泌)を覚えるのです。
さらに、転がり落ちる球体を眼球だけで追うことで追視能力が鍛えられ、将来の読書や空間認識能力の基礎が築かれます。また、手のひら全体で掴む動作から、親指・人差し指・中指の「3本指」でつまんで放す微細運動への移行を促すなど、0歳・1歳・2歳の知育において手指の巧緻性を高める絶大なメリットを備えています。