英語圏で2月の満月を指す「スノームーン(Snow Moon)」という呼称は、米国の伝統ある民間暦『オールド・ファーマーズ・アルマナック(The Old Farmer's Almanac)』を通じて世界中に普及しました。その起源は北米先住民のアルゴンキン族をはじめとするネイティブ・アメリカンが、狩猟や採集、農耕の指標として各月の満月に付けた生活密着型の季節名に由来します。
北米東部において2月は年間で最も積雪量が多く、激しい吹雪によって視界が閉ざされ、深い雪原によって移動すら困難を極める厳酷な季節でした。過酷な大自然と対峙していた彼らにとって、銀世界を無慈悲なまでに明るく照らし出す2月の満月は、寒冷のピークを象徴する畏怖の対象でもありました。日本における「雪月(せつげつ)」という和名も、雪深い気候風土と重なり合い、冬の情緒を伝える表現として定着しています。
また、雪に閉ざされて食糧の獲得が困難を極めたことから、一部の部族ではこの月を「ハンガームーン(飢餓月)」や「ストームムーン(嵐月)」と呼んでいた記録も民俗調査によって明らかにされています。厳しい冬を耐え忍び、間もなく訪れる春の息吹を待つ人々の切実な祈りが、その名には色濃く刻まれているのです。