地震発生直後、近隣住民同士による共助や救出活動は極めて貴重な力です。しかし、クラッシュ症候群の病理を知らないまま行動を起こすと、救えるはずの命を危険に晒すことになります。特にネット上やSNSで散見される誤った情報には厳重な警戒が必要です。
誤解1:「一刻も早く瓦礫をどけて引っ張り出すのが正義」という思い込み
2時間以上にわたって下半身が挟まれている要救助者を発見した際、準備なしに怪力やバールで梁を一気に持ち上げてしまう行為は、心臓へ毒素を一気に流し込む引き金になります。救助隊や医療班が現場に向かっている最中であれば、無暗に圧迫を解除せず、到着を待って医療管理下で解除することが鉄則です。どうしても周囲の火災や津波が迫っており即時脱出が必要な切迫状況を除き、「ただ早く引っ張り出せば助かる」という認識は改めなければなりません。
誤解2:「喉が渇いたと言っているから、手元の飲み物を何でも飲ませる」
救出前後の被災者は激しい口渇を訴えます。しかし、ここで柑橘類ジュース、野菜ジュース、スポーツドリンク(高浸透圧・ミネラル高配合タイプ)、お茶などを安易に与えるのは絶対に禁忌です。これらの飲料にはカリウムが豊富に含まれていることが多く、ただでさえ跳ね上がっている血中カリウム濃度をさらに危険域へと押し上げ、致死性不整脈を誘発します。
誤解3:「手足が冷たくなっているから、お風呂やカイロで急激に温める」
冷え切った四肢を見ると温めたくなりますが、虚血部位を急激に加温すると末梢血管が拡張し、全身の循環血液量がさらに低下して低血圧ショックを悪化させます。また、代謝が急激に亢進することで筋細胞の崩壊が加速します。急激な加温ではなく、体幹部を中心とした自然な保温にとどめるのが原則です。