劇場版シリーズの歴史を俯瞰した際、なぜ第4作である本作が「名探偵コナン 劇場版 歴代ランキング」において常にトップを争い続けるのか。その答えは、近年の劇場版が主軸とする大規模なアクションスペクタクルとは一線を画す、緊密に構築された「本格ミステリーとしての純度」にあります。
現行の劇場版が公安警察や黒ずくめの組織、あるいは怪盗キッドとの対決によるド派手な破壊劇を呼び水にしているのに対し、本作が描いたのは「警察内部の闇」と「身近な人間の豹変」という、極めて重厚な心理サスペンスでした。奈良沢警部補、芝刑事と現職警察官が連続して射殺され、警視庁捜査一課の面々が「Need not to know(知る必要のないこと)」という警察隠語の壁に阻まれる閉塞感は、大人向けの実写クライムノベルに匹敵するリアリティを漂わせています。
日本テレビ系『金曜ロードショー』が2020年に実施した「歴代劇場版名探偵コナン作品人気投票」において、並み居る近年の大ヒット作を抑えて第1位に輝いた事実は象徴的です。奇をてらったギミックに頼らず、人間感情の機微を丹念に積み上げた作劇こそが、長きにわたってファンを魅了し続ける原動力となっています。