見上げるほど高い天井を見渡せば、日本の伝統美を凝縮した重厚な宮造り建築の美しさに圧倒される。社寺建築の技法を取り入れた唐破風の屋根、木造の格子天井は、東京の銭湯建築が誇る最高峰の意匠だ。
浴室の壁面を飾るのは、日本屈指の銭湯ペンキ絵師であった故・丸山清人氏の手による雄大な富士山である。何層にも塗り重ねられた青と白のグラデーション、力強い筆致で描かれた岩肌と雲海。湯船に深く浸かりながら見上げるその景色は、まるで一枚の巨大なキャンバスに包まれているかのような錯覚を覚える。近年急速に失われつつある手描きの背景画が、ここでは大切に維持・保存されている。