映画監督・是枝裕和は、彼女の自宅を訪れた際、その空間が醸し出す佇まいに強い感銘を受けたと語っている。その体験は、カンヌ国際映画祭でパルム・ドールを受賞した名作『万引き家族』の美術構想にも大きな影響を与えた。
劇中で樹木希林が演じた祖母・初枝が狭い台所でぬか漬けを混ぜたり、家族のために手料理を準備したりする細やかな仕草。あれは単なる演技を超えた、彼女が日頃から自宅キッチンで培ってきた日常の動作そのものだった。スクリーンに滲み出る圧倒的なリアリティは、彼女が長年積み重ねてきた台所仕事の美学から直接手渡されたものだったと言える。