世界中で引用される「幻のロングバージョン」には、複数の英語テキストが存在します。最も広く知られている英文の構成を確認してみましょう。
"Boys, be ambitious! Be ambitious not for money or for selfish aggrandizement, not for that evanescent thing which men call fame. Be ambitious for the knowledge, for the righteousness, and for the improvement of the nation and the world. Boys, be ambitious!"
この英語原文において極めて特徴的なのは、否定辞「not for...」を3度重ねる修辞法です。money(金銭欲)、selfish aggrandizement(自己拡大・立身出世)、evanescent fame(儚い名声)を明確に退け、知識(knowledge)と正義(righteousness)、そして国家と世界への貢献(improvement of the nation and the world)を求めています。
取材を進めると、この格調高い長文は、内村鑑三や新渡戸稲造といった札幌農学校第2期生たちの信仰告白や、クラーク博士の母校マサチューセッツ農科大学の同窓会誌、さらには昭和初期に発行された伝記本の記述が交錯する中で定着した経緯が見えてきます。つまり、現場の即興劇ではなく、クラーク精神の神髄を後世に語り継ぐために磨き上げられた「思想的モニュメント」だったのです。