サラダパンの生みの親は、滋賀県長浜市木之本町に店を構える1957年(昭和32年)創業のつるやパン 本店です。戦後の食糧難が落ち着きを見せ始めた昭和30年代前半、初代店主・西村重太郎氏とともに店を切り盛りしていた妻の西村智恵子氏が「毎日食べても飽きない、健康的で安価な総菜パンを作りたい」と考えたことがすべての始まりでした。
1958年(昭和33年)に誕生した初代サラダパンの具材は、実はたくあんではなく「塩もみしたキャベツの千切りを特製マヨネーズで和えたもの」でした。当時としては極めてハイカラな洋風総菜パンとして発売され、野菜(サラダ)を挟んだパンという意味で「サラダパン」と命名されたのです。
しかし、当時の包装技術や流通環境において大きな壁にぶつかります。キャベツから時間の経過とともに余分な水分が染み出し、コッペパンの生地をベチャベチャにふやかしてしまうという品質保持の課題でした。仕入れ先や季節による野菜価格の乱高下も重なり、智恵子氏はキャベツに代わる「水分が出にくく、日持ちがして、シャキシャキした食感を維持できる食材」を求めて試行錯誤を重ねました。
そこで1962年(昭和37年)、地元で親しまれていた漬物に着目。細かく刻んだたくあんの水分をしっかりと絞り、特製のマヨネーズ風ドレッシングで和えてパンに挟んだところ、パンのふんわり感を損なわず、たくあんの小気味よい塩気と食感が絶妙にマッチすることを発見しました。パッケージの印刷袋を大量に刷り終えていたことや、「大根も立派な野菜(サラダ)である」という柔軟な発想から、中身をたくあんに変更した後も商品名は「サラダパン」のまま現在へと受け継がれています。