自動車メーカーや産業機械のエンジニアは、単にコストだけでなく、パーツごとに課される物理的ストレスを計算し尽くして製法を決定しています。自動車部品における鍛造と鋳造の使い分け理由には、極めて合理的な工学的背景が存在します。
エンジン内部で1分間に数千回転し、爆発的な燃焼圧力を受け止める「クランクシャフト」や「コネクティングロッド(コンロッド)」には、圧倒的な疲労限度が求められるため、例外なく熱間鍛造品が採用されます。また、足回りのナックルやハブベアリング周辺など、人命に直結する重要保安部品にも鍛造が重用されます。
それに対して、シリンダーブロックやシリンダーヘッド、トランスミッションケースといった複雑な冷却水路(ウォータージャケット)や油圧回路を内包する大型部品には鋳造(主にアルミダイカストや砂型鋳造)が用いられます。これらの部品を鍛造からの切削で作ろうとすると、材料の90%以上を削り捨てることになり、莫大な時間とコストが発生して市販車の価格を非現実的な水準に押し上げてしまうためです。