どれほど調味料やテクニックが優れていても、素材そのもののポテンシャルを見誤っては元も子もない。大根は、葉がみずみずしくピンと張っており、肌が白くきめ細やかで、ずっしりと重みのあるものを選ぶのが鉄則だ。水分が多くて甘みが強い中央から上の部位は煮物に最も適しており、出汁をたっぷりと吸い込みながらも心地よい歯ごたえを残してくれる。
そして、味の決め手となるがんもどき。豆腐に山芋や人参、キクラゲ、銀杏などを練り込んで揚げたこの伝統食材は、いわば「旨味のスポンジ」だ。調理前に熱湯を回しかけて余分な酸化油をしっかりと落とす「油抜き」を怠ってはならない。このわずか30秒の作業を挟むだけで、油臭さが消え去り、煮汁の出汁を吸い込む隙間が生まれる。下処理を終えたがんもどきを噛み締めたとき、中から溢れ出す出汁の清らかさは格別だ。