この店を語る上で避けて通れないのが、名物として名高いパンケーキ・スイーツの存在だ。厨房の奥を覗かせてもらうと、グリドルの上で静かに熱を吸い込む生地が、息をするようにふっくらと膨らんでいた。メレンゲの泡立て方、粉のブレンド比率、そして鉄板の温度管理。すべてが秒単位の狂いもなく計算されている。
「ナイフを入れたときの感触を、ただ柔らかいだけで終わらせたくないんです」と語るベーカーの手つきは迷いがない。運ばれてきた焼き立ての一皿にフォークを沈めると、表面のわずかな香ばしさを破った先に、驚くほどきめ細やかなスフレ状の生地が広がる。舌の上でほどける甘みと、別添えのビターなメープルシロップが織りなす対比。流行りの派手なトッピングに頼ることなく、生地そのものの力強さで勝負する姿勢に、職人の静かな意地を見た。