虫刺されの直後に生じる赤みや腫れは、蚊などの唾液腺物質に対する生体の即時型アレルギー反応だ。問題は、その後に襲いかかる痒みに任せて皮膚を掻き壊してしまうことにある。爪で表皮を傷つけると組織の損傷が真皮近くまで及び、生体防御反応として過剰なメラニン色素が生成される。
これが現代の皮膚科学において「炎症後色素沈着(PIH)」と呼ばれる現象の実態だ。通常であれば肌のターンオーバーとともにメラニンは排出されるが、強い炎症や繰り返される摩擦によって基底層が破壊されると、メラニンが真皮層へ滴下してしまう。真皮に落ちた色素は排出に数年を要するか、最悪の場合は半永久的なシミとして居座ることになる。