大衆の記憶において、「ちきゅう」の姿はフィクションとも深く結びついている。小松左京の不朽の名作を再映画化した映画『日本沈没』において、船体は日本列島の危機を食い止めるための象徴的な舞台として登場した。巨大なデリックから深海へと伸びるドリルが、映画館のスクリーン越しに観客の胸を激しく揺さぶったことは記憶に新しい。
だが現実の探査は、脚本家が描いたドラマよりも遥かに泥臭く、遥かにスリリングだ。NHKオンデマンドなどで今なお高い視聴数を誇る数々の科学ドキュメンタリーが捉えてきたのは、予測不能な海流による掘削中断、機材トラブルによるパイプの破断、そして極限のプレッシャーに胃を痛めながら決断を下す研究者・船員たちの生々しい息遣いである。CGでは決して表現できないリアルな葛藤と科学的執念が、この船には常に渦巻いている。