目のズレに関する不安は、乳幼児期と成人以降で注意すべきリスクが根本から異なります。それぞれの年代に応じた見極めが必要です。
乳幼児において保護者から最も多く寄せられる相談が「目が寄っているように見える」というケースです。しかし、その多くは「偽斜視(仮性内斜視)」と呼ばれる生理的な現象です。日本人の赤ちゃんは鼻の根元が低く平らで、目頭の皮膚(蒙古ひだ)が白目を覆っているため、実際には正常な視線であっても内斜視に見えやすい構造になっています。
偽斜視か本物の斜視かを見分ける決定打は、前述した「フラッシュ写真の光の反射点」です。白目が隠れていても、黒目の中央にフラッシュの光が対称に入っていれば偽斜視の可能性が高く、骨格の発達とともに成長に伴って自然と目立たなくなります。ただし、光の位置が非対称である場合や、生後6か月を過ぎても視線が合わない場合は、弱視を防ぐために速やかな小児眼科受診が必要です。
一方で、大人の斜視は後天的な要因が中心となります。特に成人以降に突然「物が二重に見え始めた」「片目が急に内側に寄った」という場合、単なる目の疲れではなく、糖尿病や高血圧による微小血管障害、脳動脈瘤や脳梗塞などの頭蓋内病変、あるいは重症筋無力症などの神経疾患が初発症状として現れているリスクがあります。大人における急激な視線変化は、全身疾患のサインとして捉える視点が不可欠です。