京都の太秦撮影所に構築された五鉄のセットには、職人たちの執念が宿っている。松竹株式会社と時代劇専門チャンネルの共同制作チームは、江戸時代の文献や池波正太郎の原作記述を徹底的にリサーチし、柱の傷ひとつ、鍋の使い込まれた質感に至るまで忠実に再現した。
特に注力されたのが「音」と「湯気」のリアルさだ。CGに頼りがちな現代の映像制作にあって、五鉄のシーンでは実際に軍鶏肉を煮立て、立ち上る本物の湯気を捉えている。煮える音や箸と鍋が触れ合うかすかな音が、視聴者の視覚と聴覚を同時に刺激する。職人技が光るこのセットこそが、俳優たちの臨場感あふれる演技を引き出す最高の舞台装置となっている。