藤谷美和子という表現者の凄みを語る上で、映画監督・北野武の鮮烈な監督デビュー作『その男、凶暴につき』(1989年)を外すことはできない。麻薬中毒に侵され、暴力と狂気に翻弄される主人公の妹役を演じた彼女の演技は、観る者の呼吸を止めるほどの痛切さを放っていた。
台詞に頼らず、虚ろな眼差しやわずかな身体の震えだけで内面の破壊を表現するその姿は、北野映画の乾いたトーンと完璧に共鳴した。当時、映画賞の助演女優賞を総なめにしたこの怪演は、彼女が単なる「可愛いアイドル女優」ではなく、人間の深淵を描き切る孤高の表現者であることを証明した。現在、NetflixやU-NEXTといった動画配信プラットフォームで本作に触れた若い映画ファンが、彼女の底知れぬ表現力に衝撃を受ける現象が相次いでいるのも頷ける。