ノクターンはピアノ独奏の世界にとどまりませんでした。19世紀末から20世紀初頭にかけて、フランス印象主義の巨匠クロード・ドビュッシーは、この形式をオーケストラへと大胆に拡張しました。
1899年に完成した管弦楽のための『夜想曲(Nocturnes)』は、以下の3楽章から構成されています。
- 第1曲「雲(Nuages)」:空をゆっくりと漂う灰色の雲と、静止した時間の感覚を捉えた神秘的な音響。
- 第2曲「祭(Fêtes)」:閃光のようなリズムと突如現れる行進曲の行列が、祝祭の熱気と幻想を描写。
- 第3曲「シレーヌ(Sirènes)」:女声合唱(ヴォカリーズ)を管弦楽の色彩の一部として組み込み、ギリシャ神話の海の精シレーヌの魅惑と波のきらめきを表現。
ドビュッシー自身が初演時のプログラムノートで「夜の装飾的効果そのものではなく、光や情景が引き起こす様々な印象のニュアンスを追求した」と記した通り、ノクターンは近代において「光と影の移ろいを音で捉える音響詩」へと劇的な進化を遂げました。