料理番組やレシピ本で「きのこ類は洗わない」と強調される背景には、食品科学に基づいた明確な理由が存在します。しいたけの傘や軸を構成する菌糸体は、微細な空洞が無数に広がる多孔質構造(スポンジ状)をしています。流水に浸した瞬間、周囲の水分を一気に吸収し、細胞膜の内側に水分を溜め込んでしまいます。
この吸水現象こそが、しいたけ水洗いNG理由の核心です。水分を抱え込んだしいたけは、加熱調理時に本来の水分蒸発と濃縮が行われず、蒸し焼きのような状態になって特有の歯ごたえ(弾力感)が損なわれます。さらに、香り成分であるレンチオニンや、日本三大旨味成分の一つとして知られるしいたけ旨味成分グアニル酸の生成を助ける酵素群が水とともに流れ出してしまうのです。
一般的なきのこ洗わない理由も全く同様で、きのこは洗うことで「水っぽく生臭い仕上がり」へと劣化してしまいます。美味しさを極限まで引き出すためには、いかに水分を含ませずに調理へ回すかがプロの絶対条件となります。