本作の持つ唯一無二の求心力は、昭和・平成の歌謡界を支えた名匠たちの職人技によって生み出されました。作詞を手掛けた池田充男は、港や海峡を舞台にした情緒ある叙情詩の名手であり、作曲の伊藤雪彦は大月みやこの声質と表現力を知り尽くした盟友です。
『白い海峡』の歌詞が描き出すのは、愛する人を乗せて去りゆく連絡船を見送る女性の絶望と、それでも断ち切れない未練の情炎です。具体的な地名はあえて限定されていませんが、白く泡立つ波頭、凍てつく風、遠ざかる汽笛といった情景描写から、北国の厳しい海峡(津軽海峡や日本海沿岸の連絡船航路)を彷彿とさせます。
池田充男による言葉選びは、単なる悲哀の吐露にとどまらず、「白い海」という色彩のコントラストを用いることで、主人公の胸中で燃え盛る情念の赤さを逆説的に際立たせています。伊藤雪彦によるメロディーラインは、Aメロの静かな語り口からサビに向かって一気に感情が決壊するダイナミックな跳躍を持ち、聴く者の心を激しく揺さぶります。