『最後の晩餐』を現場で鑑賞する際、事前に知っておくことで体験価値が跳ね上がる重要なポイントが2つあります。それは「絵画技法に起因する繊細な保存状態」と「13人の登場人物が織りなす心理描写」です。
なぜ食堂の壁画がこれほど傷んでいるのか?
通常、教会の壁画には漆喰が乾かないうちに顔料を乗せる「フレスコ技法」が用いられます。しかし、完璧主義で遅筆だったダ・ヴィンチは、乾くのを待たずに描き直せる「テンペラと油彩を混ぜた混合技法(セッコ技法)」を乾いた漆喰壁の上に採用しました。この実験的技法が裏目に出て、完成からわずか20年足らずで剥離が始まり、湿気や第二次世界大戦の空爆被害、過去の杜撰な修復によって甚大な劣化が進みました。現在私たちが目にしている姿は、1977年から20年以上の歳月をかけて行われた世紀の大修復によって、後世の加筆を取り除きダ・ヴィンチ本人の筆跡を可能な限り蘇らせた貴重な遺産です。
見どころ詳細:緊迫する13人の登場人物
壁画の中央にはイエス・キリストが座し、左右に3人ずつのグループで計12人の使徒が配置されています。ダ・ヴィンチが描いたのは、キリストが「はっきりとあなたがたに言うが、あなたがたのうちのひとりがわたしを裏切ろうとしている」と告げた直後の緊迫した一瞬です。
キリストの向かって左側で銀貨の入った小袋を握りしめ身を引くユダ、怒りに燃えてナイフを手に立ち上がるペテロ、キリストの言葉に悲痛な表情を浮かべる若きヨハネなど、一人ひとりの驚きや疑念、動揺の心理状態が見事な遠近法(消失点はキリストの右こめかみ)とともに計算し尽くされて描かれています。
【プロの結論】おすすめできる人・慎重になるべき人の判断基準
『最後の晩餐』鑑賞は、すべてのミラノ渡航者におすすめできる至高の体験ですが、旅程の制約によっては向き不向きが存在します。
【鑑賞をおすすめできる人】
・数か月前から旅行日程が決まっており、計画的に予約手続きを行える人
・ダ・ヴィンチの筆跡やルネサンス美術の最高峰を、解説とともに静かに味わいたい人
・15分という短い鑑賞時間でも、その歴史的価値に深く感動できる人
【慎重な判断が必要な人】
・直前の無計画な旅行で、ミラノ滞在時間が2〜3時間程度しかない人
・巨大な美術館を数時間かけて自由に歩き回り、大量の作品を一気に鑑賞したい人(ブレラ絵画館など他の大型美術館のほうが満足度が高くなる可能性があります)