2019年に「スマイルシンデレラ」として日本中を熱狂させた渋野日向子が、米ツアー本格参戦後に一時的な不振に陥った背景には、明確な技術的挑戦と身体的アクシデントが存在しました。
第一の要因は、世界基準を見据えたスイング改造の理由にあります。日本ツアーで猛威を振るった深い前傾とフラットな軌道から、米国の硬いグリーンや強風に対応するため、より入射角を安定させて縦振りに近いコンパクトなトップを目指すフォーム変更に着手しました。しかし、スイングの過渡期においてクラブ軌道とフェース面の管理にズレが生じ、生命線であったアイアンの距離感と方向性に狂いが生じました。
第二の要因は、2023年シーズンに表面化した左手首・左指の腱鞘炎です。スイングの変更期に痛みが生じたことで練習量が制限され、インパクト時の思い切った振り抜きが困難となりました。予選落ちが続くプレッシャーの中、米国の過酷な環境下で自己不信と戦う日々が続きました。
潮目が変わったのは2024年の全米女子オープンでした。痛みが寛解に向かうとともに、青木翔コーチをはじめとするサポート陣との対話を重ね、極端な改造から「自身の本来の感覚」と「米国仕様の技術」をハイブリッドに融合させるスイングへと原点回帰を果たしました。メジャーの難セッティングで発揮された持ち前の勝負強さは、彼女のポテンシャルが世界最高峰であることを改めて証明しました。