犬や猫の足裏にある肉球(解剖学的には掌球・足根球・指球・趾球など)は、厚い角質層、コラーゲンやエラスチンを豊富に含む皮下脂肪組織、そして血管と神経網で構成された高度なクッション器官です。この肉球の色彩を決定づけている最大の要因は、表皮基底層に存在するメラニン色素の量にあります。
肉球が鮮やかなピンク色を呈している個体は、遺伝的にメラニン色素を生成する能力が低い、あるいは色素沈着が極めて薄い状態にあります。角質層が無色透明に近いため、その直下にある真皮層の毛細血管を流れるヘモグロビン(赤血球)の色が光の散乱によって淡いピンク色として視覚化されているのです。
臨床獣医学の見解によれば、被毛の色と肉球の色には強固な遺伝的連動性が認められます。代表的なパターンとして以下の特徴が挙げられます。
- 白猫・淡色被毛の猫:メラニン合成を抑制する優性白遺伝子(W遺伝子)や白斑遺伝子(S遺伝子)の働きにより、白猫の肉球はほぼ100%ピンク色になります。同様に、クリームや淡い茶トラの猫もピンク色の肉球を持つ確率が極めて高くなります。
- 黒猫・濃色被毛の猫:ユーメラニン(黒色〜褐色色素)が皮膚全体に大量供給されるため、黒猫の肉球の色は基本的に濃いあずき色〜漆黒になります。
- 犬における傾向:マルチーズ、ビション・フリーゼ、ホワイト・スイス・シェパードなどの白系犬種や、毛色の薄いトイ・プードルでは犬の肉球もクリアなピンク色を示す個体が多く見られます。一方、ラブラドール・レトリバー(ブラック)や柴犬などは濃色系の肉球が標準的です。
つまり、ピンク色の肉球は「色素を持たない素肌に血色が映し出された無垢な状態」であると解釈できます。