なぜダイオウホウズキイカはここまで巨大な体躯を手に入れたのか。生物学において有力視されている要因が「深海巨大症(Deep-sea gigantism)」および「極域巨大症」と呼ばれる現象です。水温が極めて低く高圧な環境下では、代謝速度が遅くなり長寿化する傾向があります。さらに酸素濃度の高さや細胞サイズの拡大、捕食圧への適応などが重なり、数百万年の進化の過程で規格外の大型化を遂げたと分析されています。
この未知の怪物を世界に知らしめた決定的な出来事が、2007年に南極ロス海でニュージーランドの漁船によって行われた歴史的捕獲です。ライギョ延縄漁の針にかかった約495kgの巨大個体は冷凍保存され、首都ウェリントンにあるテパパ・トンガレワ国立博物館(Museum of New Zealand Te Papa Tongarewa)へ運ばれました。世界規模で生中継された解剖調査を経て、現在は同博物館にて世界唯一の完全液浸標本として常設展示されており、世界中の研究者に貴重な知見を提供し続けています。