周囲の草木に溶け込む緑色や枯れ草色の褐色こそがバッタ類の基本的な保護色ですが、なぜ目立つピンク色に変化してしまうのでしょうか。その決定的な理由は、先天的な遺伝子の突然変異である「赤色症(エリスリズム / Erythrism)」にあります。
昆虫の体色は複数の色素(黒や茶色を司るメラニン、緑や黄色を司るカロテノイドやビリジンなど)の複雑な配合バランスによって形成されています。しかし、赤色症を発症した個体では、黒色や緑色の色素を生成する生化学経路に異常が生じ、赤色系色素の過剰沈着または黒色色素の生成抑制が引き起こされます。これにより、まるで蛍光塗料を塗ったかのようなピンク色に染まるのです。
この現象はアルビノ(白化症)やメラニズム(黒化症)と同様の遺伝子疾患であり、病気や外部環境の汚れではありません。生まれつき備わった遺伝子の配列エラーによって引き起こされる、極めて珍しい自然の造形といえます。