ふたりの物語の原点は、1960年代後半のグループサウンズ黄金期にまで遡ります。妹・伊藤ユミとともに「ザ・ピーナッツ」として『恋のバカンス』『情熱の花』などのメガヒットを連発し、渡辺プロダクションの屋台骨を支えていた伊藤エミ。一方、ザ・タイガースのリードボーカルとして熱狂的な少女ファンを従え、瞬く間にトップアイドルへ登り詰めた沢田研二。同じ事務所の先輩・後輩という間柄から、ふたりの距離は自然と縮まっていきました。
当時、7歳年上だった伊藤エミに対し、沢田はデビュー前から強い憧れを抱いていたと自著や当時の対談で明かしています。芸能界の過酷なプレッシャーに晒されていた若きジュリーにとって、穏やかで包容力に満ちたエミは、心を許せる唯一無二のシェルターでした。多忙を極めるスケジュールの合間を縫い、人目を忍んで育まれた純愛は、実に7年もの歳月に及びました。
大きな転機が訪れたのは1975年です。同年4月、ザ・ピーナッツはNHKホールでのさよなら公演を最後に、絶頂期のまま芸能界を完全引退。表舞台を退いたエミは家庭に入る決意を固め、直後の1975年6月4日、ふたりは出雲大社東京分祠で華燭の典を挙げました。スーパースターが年上の元トップアイドルと結ばれたニュースは、列島中を幸福な熱気で包み込み、1979年3月には待望の長男・一人(かずと)さんが誕生。まさに誰もが羨む理想の家庭が築かれたかに見えました。