一般のスーパーでスパイスの小瓶(約15g)を購入すると、1本あたり200円から300円程度するのが相場だ。ところが、近くのネパール食材店に入ると、100g入りのクミンシードやコリアンダーパウダーが200〜300円前後、1kg入りの大袋であっても800〜1,200円程度で販売されている。グラム単価で換算すると、実質的に一般小売店の5分の1から10分の1という驚異的な価格設定である。この圧倒的な価格差に「品質に問題があるのではないか」「違法なルートで輸入されているのではないか」と疑念を抱く消費者も少なくない。
しかし、流通構造を綿密に取材すると、極めて合理的で健全なコストカットの仕組みが浮かび上がる。ネパールショップ安い理由の根幹は、以下の4点に集約される。
第一に、「コミュニティ直結の独自コンテナ輸送ルート」の存在だ。在日ネパール人ビジネスネットワークは、ドバイ、インド、ネパール現地の輸出業者と直接提携し、海上コンテナ単位でスパイスや穀物を一括仕入れしている。商社、卸売業者、二次問屋といった何重もの中間マージンが完全に排除されているのだ。
第二に、「徹底的な包装コストの削減」である。日本の家庭向けスパイス瓶のような精緻なガラス容器やプラスチックキャップは使用せず、シンプルな厚手ビニール袋に現地仕様のラベルを貼っただけの状態で陳列されている。容器代やデザイン費、国内充填の人件費が一切かかっていない。
第三に、「店舗の多機能化による高収益モデル」が確立されている点だ。多くの店舗は食材物販だけでなく、海外送金サービス代理店、国際格安SIMカードの取次、母国向けアパレルや日用品の販売、さらには奥でネパール料理店(軽食・居酒屋)を併設している。食材販売単体で高い粗利益率を追う必要がなく、コミュニティの集客装置として薄利多売を維持できる仕組みが完成している。