お弁当に入れた唐揚げが「ベチャッとして皮が剥がれてしまう」最大の原因は、衣の中に閉じ込められた水分が時間経過とともに外側へと染み出し、衣のデンプン構造を崩壊させてしまう点にあります。
栗原はるみ流の二度揚げプロセスは、この水分移動を物理的に制御する極めて理にかなった手法です。
- 1回目の加熱(約180℃で約2分):まずは表面の片栗粉を軽く固め、旨味の流出を食い止めます。このとき肉の中心温度は上がりきっていませんが、焦がさない段階で一度網に引き上げます。
- 余熱による加熱浸透(網の上で約2分休ませる):肉を取り出すと、余熱によって肉汁が中心から全体へと均一に行き渡ります。急激な加熱を避けることで、肉のタンパク質が過剰に収縮せず、ふっくらと柔らかな繊維構造が維持されます。
- 2回目の仕上げ揚げ(強火で約1分弱):最後に高温の油にサッとくぐらせることで、表面に浮き出た余分な水分を一気に気化させます。この瞬間、表面の片栗粉がカリカリとした強固なクリスピー層を形成します。
さらに、揚げ始めの「約1分〜1分半は箸で一切触らず見守る」という鉄則を守ることで、衣が剥がれず油の中で美しい皮膜となって定着します。この緻密な工程があるからこそ、数時間後のお弁当でもサクサクした心地よい歯ざわりが保たれるのです。