桜良の葬儀が終わってから1ヶ月間、「僕」は現実を受け止めきれず自室に引きこもり続けます。ようやく外へ出る決意を固めた「僕」は、山内家を訪ね、桜良の母親に対面します。母親から手渡されたのは、桜良が「死んだら彼に渡してほしい」と言い遺していた日記帳『共病文庫』でした。
ページをめくると、そこには病気に怯え、孤独に押し潰されそうになりながらも、笑顔の仮面を被り続けていた少女の赤裸々な本音が刻まれていました。そして、日記の最後に遺されていた「僕」宛ての遺書には、驚くべき告白が記されていたのです。桜良は、「僕」が自分を羨望していたのと同じように、誰にも依存せず自分の力だけで完結して立っている「僕」の精神的強さを、心の底から憧れ、尊敬していたのでした。
ここで初めて、それまで伏せられていた「僕」の本名が明かされます。「僕」の正体は志賀春樹(しが はるき)。名前に「春」を冠する彼と、名前に「桜」を冠する山内桜良。春の季節に咲き誇り、散っていく桜と、それを受け止め巡り続ける春の木々という見事な対比構造が完成します。他者と断絶していた春樹は、桜良という光を失った後、彼女の唯一無二の親友であった恭子と向き合い、「友達になってほしい」と自ら一歩を踏み出すことで、桜良が遺した生を自らの内に継承していくことになります。