ネット上にはセルフでのリップピアスの開け方を解説する動画や体験談が散見されますが、結論から言えば、口元のピアッシングを自力で無傷かつ左右対称に完遂する難易度は極めて高いのが現実です。唇の皮膚と口腔内粘膜では組織の弾力性が異なり、針を通す途中で唇が逃げてしまい、予定していた角度から大きくズレて貫通するリスクが常に付きまといます。
それでもセルフを選択する場合、絶対条件となるのが滅菌済みボディピアス専用ニードル(医療用中空針)の使用です。ニードルは刃物のように組織をシャープにスライスして進むため、周囲の細胞破壊を最小限に抑え、術後の出血や腫れを大幅に軽減します。逆に「リップピアスでピアッサーをおすすめしない理由」は極めて明確です。耳たぶ用のピアッサーは先端が尖っているだけの太いスタッドをスプリングの力で無理やり押し込む構造のため、唇の柔らかく厚い組織を鈍力で押し潰す「挫滅(ざめつ)」を引き起こします。その結果、激しい炎症、治癒の長期化、さらには初期にセットされる短いポスト(軸)が腫れ上がった唇に完全に埋没し、医療機関で切開摘出せざるを得なくなる事態を頻発させています。
ニードルを用いた施術で痛みを最小限に抑える裏ワザとして、プロの現場でも重視されるのが「事前の適切な冷却」と「呼気に合わせた貫通」です。氷で冷やしすぎると筋肉が硬直して針の通りが悪くなるため、保冷剤を清潔なガーゼで包み、表面感覚がわずかに鈍る1〜2分程度の冷却にとどめます。そして、フォーセプス(先端が開いた鉗子)で唇を垂直に固定し、息をゆっくり深く吐き出すタイミングに合わせて一定のスピードで押し込むことで、筋肉の過度な緊張による痛みを大幅に逃がすことができます。