腰から太もも裏、ふくらはぎにかけて電気が走るような痛みやしびれを感じたとき、多くの人は「腰椎椎間板ヘルニア」や「脊柱管狭窄症」を疑います。しかし、腰部MRIを撮影しても明確な神経圧迫が見当たらないケースにおいて、見逃してはならないのが坐骨神経痛と外旋筋の経緯です。
坐骨神経は人体の中で最も太い神経であり、骨盤内から臀部へ抜ける際、大坐骨孔にある梨状筋のすぐ下(梨状筋下孔)を通過します。この走行ルートこそが、いわゆる梨状筋症候群の真相を紐解く最大の鍵です。長時間の圧迫や過度な運動負荷によって梨状筋がスパズム(持続的攣縮)を起こして硬化・肥大すると、直下を通る太い神経をサンドイッチのように挟み込んで締め付けてしまいます。
解剖学的なバリエーションとして、日本人の約10〜15%前後は坐骨神経が梨状筋の間を貫通して走行しているという形態異常が知られています。こうした先天的要因を持つ人の場合、少し臀部を冷やしたり長時間のデスクワークを続けたりしただけで、激しい下肢痛やしびれを誘発しやすい傾向にあります。
さらに近年、梨状筋だけでなく、その深部に位置する内閉鎖筋や大腿方形筋の瘢痕化によっても神経絞扼が起こることが判明してきました。「お尻の奥がズキズキと疼く」「椅子に腰掛けると患部が当たって座っていられない」という症状は、骨自体の変形ではなく、外旋筋群の慢性的な緊張が招いた物理的な神経圧迫であるケースが極めて多いのです。