台風接近時や本州南岸を急速に発達する低気圧が通過する際、富士海岸のライブカメラには普段と全く異なる荒涼たる光景が映し出されます。堤防に衝突した海水が数十メートルの水柱となって噴き上がる様子は、映像越しにもその破壊力を伝えています。この時、駿河湾沿岸で猛威を振るう物理現象が「寄り回り波(よりまわりなみ)」です。
駿河湾は、湾口から最深部にかけて水深2,500メートルを超える「駿河トラフ」が切れ込んでいます。この世界有数の深海構造により、外洋で発生した巨大なうねりは海底摩擦によるエネルギー減衰をほとんど受けることなく、湾の最奥に位置する富士海岸まで超高速で到達します。
さらに、湾の海底地形や沿岸の岬によって波の進路が屈折(屈折現象)し、特定の沿岸部にエネルギーが集中するポイントが生じます。公的機関の観測記録によると、沖合の有義波高が2メートル程度であっても、屈折して集中した波が沿岸浅水域で重なり合い、瞬間的に6メートルを超える高波となって陸地を襲う事例が報告されています。天候が崩れる前であっても、台風の遠隔うねりが入っている状況下での海岸への接近は命取りとなります。