雇用形態の多様化が進むなか、越権行為を巡る紛争は質的な変化を遂げています。ジョブ型雇用の浸透によって個々の業務範囲(ジョブディスクリプション)が細分化された結果、「契約外の指示を受けた」「担当外の業務を同僚に勝手に進められた」という職務権限の衝突が、これまでにない頻度で表面化しています。実務上、このトラブルに直面した際の対応基準をまとめます。
自ら行動を起こす際のリスク判断基準
被害を受けた際の実践的対処法
他部署の上司や同僚から越権行為に基づく不当な指示を受けた場合、最も重要なのは「感情的な反発を避け、客観的な証拠を記録すること」です。指示内容の日時、発言者、具体的な要求内容をメールやチャットログとして保存し、自身の直属の上司へ即座に報告・相談してください。
直属の上司が対応してくれない、あるいは上司本人が越権的・パワハラ的な振る舞いを続けている場合は、社内の「人事・労務の相談窓口」や「コンプライアンス内部通報窓口」を躊躇なく活用すべきです。2022年に完全施行された改正公益通報者保護法により、従業員数300人超の企業には通報対応窓口の設置と通報者の保護が義務付けられています。社内窓口で埒が明かない場合は、各都道府県労働局に設置されている「総合労働相談コーナー」など、行政機関の外部窓口へ相談することが自らの身を守る最も確実な防衛策となります。