理科教育の現場や教員研修の報告書によると、中学生が顕微鏡観察で最もつまずきやすいのが、プレパラート上で両者を瞬時に見分ける作業です。学校現場で定番となっている2つの観察対象を比較すると、教科書の図版通りの綺麗な像が見えることは稀であり、明確な判断軸を持っておく必要があります。
植物細胞の代表として観察される「オオカナダモの葉」や「タマネギの表皮」では、レンガを隙間なく積み上げたような整然とした格子状の配列が確認できます。オオカナダモであれば、光の角度を調整した瞬間に、細胞壁の縁を緑色の葉緑体がくるくると流れるように動く「原形質流動」が観察できます。この規則正しい輪郭線こそが細胞壁の存在を示す決定打です。
一方、動物細胞の代表である「ヒトの頬の内側の粘膜細胞」を観察すると、敷石のように不揃いで、丸みを帯びた不定形の細胞がぽつぽつと散らばっています。細胞壁がないため、お互いがガチガチに固定されておらず、スライドガラス上で簡単に重なり合ったり破れたりします。このとき、酢酸オルセイン液や酢酸カーミン液を滴下すると、中央付近にある球形の「核」が鮮やかな赤色〜赤紫色に染まり出します。現場の観察手記でも、「核が1つだけクッキリ染まり、周りに緑の粒が一切なく、形がグニャリとしていれば動物細胞」と即座に判別できると報告されています。