顔面のなかでも頬骨周辺は骨と軟部組織の境界が明瞭で、内部の異常が「圧痛」として表面化しやすい特徴を持っています。医療相談プラットフォーム「AskDoctors」や各種臨床データでも、頬骨下の痛みに関する相談件数は年間を通じて高水準で推移しています。臨床現場で頻繁に特定される5つの主要原因を詳しく紐解きます。
第1の原因は、副鼻腔の一部である空洞に膿や粘液がたまる上顎洞炎(副鼻腔炎・蓄膿症)です。頬骨の裏側には左右一対の上顎洞が存在しており、風邪のウイルス感染やアレルギー反応をきっかけに急性鼻炎から副鼻腔炎へと進展します。粘膜が大きく腫れ上がって内部の排泄口(自然口)が閉塞すると、洞内の圧力が急上昇し、頬骨の下を指で軽く圧迫しただけで強い鈍痛が走ります。頭を前に傾けたり下を向いたりした際にズーンと痛みが響くのが顕著な兆候です。
第2に挙げられるのが、虫歯と歯根の炎症(根尖性歯周炎)に起因する「歯性上顎洞炎」です。奥歯(特に上顎の大臼歯や小臼歯)の歯根は、解剖学的に上顎洞の底と紙一重の距離に位置しています。重度の虫歯や過去に神経を抜いた歯の根元で雑菌が繁殖すると、炎症が骨を突き破って上顎洞へと波及します。「歯は痛くないのに頬骨の下だけがズキズキ痛む」という奇妙な症状で発覚することも珍しくありません。
第3の原因は、顔面の感覚を司る神経が異常興奮を起こす三叉神経痛の初期症状です。三叉神経の第2枝(上顎神経)は頬骨の下を通過して唇や小鼻へと伸びています。血管による神経の圧迫などが主な発症機序とされ、初期段階では「頬骨を押した瞬間」や「洗顔・化粧で肌に触れた瞬間」に、電気が走るような鋭利な激痛(電撃痛)が数秒から数十秒走ります。筋肉痛のような持続する重い痛みとは明らかに質感が異なる点が特徴です。
第4は、咀嚼を司る筋肉の過緊張による咬筋のコリと顎関節症の痛みです。日常的な無意識の食いしばり(TCH:歯列接触癖)や就寝中の歯ぎしりによって咬筋が慢性的な筋疲労に陥ると、頬骨弓の付着部付近に強いトリガーポイント(索状の硬結)が形成されます。口を大きく開けたときにカクッと音が鳴る、あるいは朝起きた瞬間に頬から顎にかけてのこわばりが強い場合、筋肉および関節軟骨の機能不全が強く疑われます。
第5に警戒すべきは、頬骨の下のしこりを伴うリンパ節腫脹や粉瘤、極めて稀ながら上顎洞がんなどの腫瘍性病変です。風邪や口腔内の炎症に反応して皮下のリンパ節が腫れるケースが大半ですが、弾力性がなく硬いしこりが数週間にわたって硬縮・増大し、押しても痛まない無痛性の場合は悪性病変の除外検査が必須となります。