十万石ふくさや公式の出荷データや直営店舗での実売基準を確認すると、十万石饅頭の日持ち(賞味期限)は常温で4日〜6日程度と設定されています。大手メーカーが手がける日持ち重視の全国銘菓の中には、2週間から1か月以上の日持ちを誇る商品も珍しくありません。その中で「1週間足らず」という日数は、購入者の目にはいささかタイトに映ります。
では、なぜこれほどまでに賞味期限が短いのでしょうか。最大の要因は、創業以来守り抜かれている十万石饅頭の原材料における無添加設計にあります。十万石饅頭の皮には、国内産つくね芋(山芋)をすりおろした風味と、新潟県産特別栽培米「あやこがね」を自家製粉したきめ細かな米粉が惜しみなく使われています。餡には北海道十勝産小豆を吟味して炊き上げた上質なこしあんが詰まっており、合成保存料や日持ち向上剤などの余計な添加物は一切加えられていません。
和菓子の世界において、山芋と米粉で蒸し上げる薯蕷(じょうよ)饅頭は、繊細な水分バランスの上に成り立っています。素材本来の芳醇な香りとしっとりした口当たりを極限まで追求した結果として、防腐剤に頼らない設計が貫かれているのです。パッケージ内には鮮度保持のために脱酸素剤が同封されていますが、一度外袋や個包装を開封すれば一気に空気に触れ、時間とともにデンプンの乾燥と風味の揮発が進みます。「日持ちが短い」という事実は、裏を返せば職人の誠実なモノづくりと本物の素材だけで作られている証左といえます。