『Let It Be』本当の意味|「なるようになる」ではない真実

『Let It Be』本当の意味|「なるようになる」ではない真実

『Let It Be』本当の意味|「なるようになる」ではない真実に関する最新の話題を分かりやすく解説いたします。

この楽曲を巡り、世界中で半世紀にわたり繰り返されてきた最大の誤解が、冒頭の「When I find myself in times of trouble, Mother Mary comes to me」に登場する「Mother Mary」をキリスト教の「聖母マリア」と同一視する解釈です。

実際、教会の賛美歌を思わせる厳かなハモンドオルガンの音色とゴスペル調のコード進行も手伝い、欧米の敬虔なクリスチャン層はこの曲を宗教的救済のシンボルとして歓迎しました。しかし、当のビートルズ内部ではこれが猛烈な軋轢を生むことになります。

無神論的で反骨精神の強かったジョン・レノンは、この歌詞を「ポールが聖者ぶって書いた偽善的な宗教ソング」と捉え、強い嫌悪感を示しました。1969年1月のいわゆる「ゲット・バック・セッション」の録音テープには、ポールが曲を演奏する合間にジョンが冷ややかな皮肉を投げかける生々しい会話が記録されています。映画『レット・イット・ビー』や2021年に公開されたピーター・ジャクソン監督のドキュメンタリー映画『ザ・ビートルズ:Get Back』でも、ジョンが児童虐待防止の基金を揶揄するようなジョークを飛ばす姿が映し出されていました。

しかし、ポール本人の意図は極めて個人的なものでした。母メアリーは生前、リバプールで看護師および助産師(マタニティ・ナース)として昼夜を問わず働き、家族の生活を経済的・精神的に支えていた誇り高き女性でした。家庭の太陽であった母の突然の病死は、少年のポールにとって癒えることのないトラウマとなっていたのです。ポールは後年のインタビューでこう明言しています。

「母の名前がメアリーだったからそう書いたんだ。僕にとっては完全に実の母のことだった。でも、リスナーが聖母マリアだと受け止めて救われるなら、それはそれで構わないと思っている」

普遍的な祈りの歌として響く一方で、その根底にあるのは母を失った孤児の魂が求めた、極めて私的で切実な母性の温もりでした。

加藤 愛美
著者

加藤 愛美

マーケティングと消費者心理のトレンドを分析し、現代のヒット商品の背景を読み解きます。