インターネット上の犬情報コミュニティでは、「短くカットすれば夏場は涼しく過ごせる」「バリカンを入れると二度と元の毛質に戻らない」といった極端な言説が散見されます。しかし、獣医学およびペットケアの現場知見に照らし合わせると、これらは大きな誤解を含んでいます。
まず「涼しさ」に関する誤解です。犬の被毛は熱線を遮断する断熱材の役割を果たしています。地肌が見えるほど短く刈り込んでしまうと、直射日光が直接皮膚に届き、かえって体感温度が上昇して熱中症のリスクを高めます。さらに、アスファルトからの照り返し熱をもろに浴びるため、短めカットであっても6mm〜10mmの毛の長さを残すことが皮膚を守る天然のバリアとして機能します。
また、「バリカンによる毛質変化」についても冷静な理解が必要です。毛根が破壊されるような特殊なバリカン負けや皮膚炎を起こさない限り、バリカンの刃自体が毛根の遺伝子情報を変えることはありません。成長サイクル(毛周期)のタイミングで一時的に硬い毛が生えてきたり、退色して見えたりすることはありますが、適切な保湿と栄養管理を行えば、時間をかけて元の毛並みに戻っていきます。「短くすると毛並みが一生台無しになる」という過度な恐怖心を持つ必要はありません。