ネット上のレシピ情報では「米粉さえあれば誰でも絶品天ぷらができる」と無邪気に語られがちですが、ここには見過ごされがちな技術的落とし穴が存在します。
最も致命的な誤解は、「どんな米粉を使っても同じ仕上がりになる」という思い込みです。米粉には製粉技術によって粒子の粗さや「損傷澱粉率」に大きな個体差があります。上新粉のような粒子が粗い米粉を使うと、衣がザラついて硬い煎餅のようになってしまいます。天ぷらに適しているのは、気流粉砕技術などで微細に砕かれた「製菓用・料理用微粉米粉」に限られます。
また、「江戸前天ぷら特有の、ぽってりとした黄色い厚衣」を米粉に求めると期待を裏切られます。米粉の衣は性質上、薄付きでクリスピーなフリットに近い食感になります。花を咲かせるように衣を散らし、ボリューミーな天ぷらを作りたい場合には、小麦粉ならではのグルテンの粘りが不可欠です。「すべての天ぷらにおいて米粉が小麦粉の上位互換である」と盲信するのは誤りであり、目指す食感に応じた使い分けが求められます。