手作り派が最も頻繁に直面する壁が、「かけたそばから油と酢がバラバラに分かれてしまい、水っぽさと油っぽさが交互に口を襲う」という分離現象です。水と油は本来、分子構造的に反発し合うため、ただ激しく混ぜるだけでは数分後に再び分離してしまいます。この問題を科学的に解決するのが「乳化(エマルション)」の技術です。
オリーブオイルドレッシング分離しない方法には、物理と化学の2つのアプローチが存在します。第一に、界面活性の役割を果たす「天然のつなぎ」を微量加えることです。具体的には以下の食材が威力を発揮します。
ディジョンマスタードに含まれるペクチンや粘性多糖類、玉ねぎすりおろしに含まれる細胞破壊成分、あるいはマヨネーズに含まれるレシチンは、親水基と親油基を併せ持つため、微細になった油の粒子の周りを取り囲み、水溶液中に安定して分散させ続けます。小さじ半分程度のマスタードを加えるだけで、分離の発生確率は劇的に低下します。
第二に、混ぜ合わせる「順序と温度」です。これが失敗しない乳化のコツと理由の核心部にあたります。多くの失敗例では、ボウルにオイルと酢を同時に入れてから混ぜ始めています。正解は、「まず酢の中に塩、胡椒、マスタードを入れ、塩が完全に溶けるまで攪拌したあと、オリーブオイルを糸のように少しずつ注ぎながら高速で混ぜる」ことです。あらかじめ油が存在すると塩が溶け残り、乳化の起点となる微小液滴が形成されません。また、冷蔵庫から出したばかりの冷えた油は粘度が高すぎて混ざりにくいため、室温(18〜22℃)で攪拌することが滑らかな質感を生み出す絶対条件となります。