掌蹠角化症とは、手のひら(手掌)や足の裏(足底)の角質層が極度に分厚く肥厚し、黄色味を帯びて硬化する慢性皮膚疾患の総称です。健康な皮膚はおよそ約28日周期のターンオーバーによって古い角質が垢となって剥がれ落ちますが、本疾患では角化シグナルが暴走し、角質細胞が過剰に蓄積し続けます。
最大の発症メカニズムは、大きく「先天性」と「後天性」の2系統に分かれます。臨床現場で圧倒的に相談件数が多いのは先天性掌蹠角化症であり、表皮の構造タンパク質であるケラチン(KRT1、KRT9など)や、細胞間接着や酵素制御を担う遺伝子の変異が主たる掌蹠角化症の原因です。これらの遺伝子に変異が生じると、物理的な刺激を受けやすい手足の表皮が防御反応を過剰に起こし、硬固な角質層を形成してしまいます。
一方で、中年期以降に突如として発症する後天性掌蹠角化症も見逃せません。MSDマニュアル等の医学文献が指摘するように、更年期に伴う内分泌バランスの急変(更年期角化症)や特定薬剤の副作用、さらには内臓悪性腫瘍(食道癌などを合併するHowel-Evans症候群やデルマドローム)の随伴症状として皮膚が厚化するケースが存在します。「年を取って足裏が固くなっただけ」と自己判断して放置すると、背景に潜む重大な全身疾患の発見が遅れるリスクを孕んでいます。