サイバー心気症の恐怖は、決して大げさな話ではありません。都内のIT関連企業に勤務する30代女性の手記には、日常が一瞬で暗転した生々しい軌跡が記されています。
「始まりは、左腕のかすかな脱力感でした。仕事の合間に『左腕 力が入らない』と打ち込んだところ、検索上位に飛び込んできたのは指定難病のALS(筋萎縮性側索硬化症)の文字でした。血の気が引き、心臓が跳ね上がりました。それからというもの、仕事中もトイレに駆け込んでは検索を繰り返し、夜はベッドで関連ブログを夜通し読み漁る日々。読めば読むほど筋肉のピクつきが増え、歩行までぎこちなくなっていきました。神経内科で『異常なし、極度の筋緊張』と診断された瞬間は安堵したものの、数日後には『初期だから検査に写らなかっただけでは』と再びスマホを握りしめていました」
このような当事者の苦悩に対し、医療現場の医師たちも強い危機感を抱いています。都内の総合診療科で外来を担当する医師は、現場の空気を次のように証言します。
「診察室に入るなり、スマートフォンの画面を突き出し『ネットで調べたらこの病気の症状と完全に一致しています。精密検査をしてください』と詰め寄る患者さんが明らかに増えています。医学的に必要のない高額なCTやMRI検査を要求され、結果に問題がないと告げると激昂されることも珍しくありません。患者さんは嘘をついているのではなく、ネット情報によって脳が完全にパニックに陥り、身体に本物の苦痛を感じてしまっているのです」
SNSや知恵袋を覗けば、「病気の検索がやめられない」「不安で吐き気がする」「誰か助けてほしい」という悲痛な叫びが連日投稿されています。画面の向こうにある無数のテキストが、現実の健康を蝕む凶器へと化している実態が浮き彫りになっています。